Hogaku Journal Article

「世界の尺八」は二十歳

デビッド勘輔ウィラー(琴古流尺八奏者・音楽学者)

今年、2つのイベント


ロンドン 国際尺八 フェスティバル

 今年の夏に尺八界にとって二つの記念的イベントがあります。その一つは8月の「ワールド尺八フェスティバル(WSF)2018inロンドン」の開催です。1998年にアメリカ・コロラド州の「ボルダー国際尺八フェスティバル」はこういった海外フェスティバルの最初で、そこに世界各地より300人の参加者・出演者が集合し、1週間にわたって、大小20公演以上の演奏会で5000人の集客を得ました。奈良時代の東大寺大仏開眼供養以来、尺八史上最大のイベントとなったといえるかもしれません。以降、WSFは東京(02年)、ニューヨーク(04年)、シドニー(08年)、京都(12年)と平均4年に一度の開催が続き、今年のロンドンWSFでちょうど20年の節目を迎えます。

 本曲を中心に海外の尺八愛好家人口はこの間ずっと増え続けています。オーストラリア尺八協会やヨーロッパ尺八協会、台湾尺八協会ができ、尺八指導で海外旅行をする日本人尺八奏者も増えています。中でも目立つのは京都の倉橋容堂さんと秩父の柿堺香さんです。彼らは1年のうち、2、3ヵ月海外(北南米、豪、欧、中国、台湾等)にいっています。


ロッキー マウンテン 尺八 サマー キャンプ

 もう一つの記念的海外イベントは、あの最初のボルダーWSF1998で生まれた感動と熱意を将来に生かすべく創立された「ロッキーマウンテン尺八サマーキャンプ」の20回記念キャンプです。今年6月20日〜25日にボルダー市郊外のサンライズ・ランチで開催されます。講師陣は倉橋容堂、クリストファー遙盟、ライリー・リー、柿堺香、私と糸方の平岡洋子で、参加者の多くは北米からですが、日本人や中国人も来ています。35人前後の参加者(全くの初心者か師範格まで)はコロラドの田園的環境の中の高級合宿感覚で歴史、理論、技術等の講習会、グループレッスン、個人レッスンを受け、生徒発表に出演します。この「ロッキー尺八キャンプ」はコロラドのロッキー山脈東麓の施設を定例会場にしていますが、コロラド州だけで開催されているわけではありません。WSFとの縁を生かし、08年はシドニーで、12年は京都で提携開催しています。

 このキャンプの一つの伝統に「Sunrise (no return) RO-buki(日の出「ロ」吹き)」があって、朝早く山に登って、地平線に向かって太陽が昇るまで筒音の「ロ」を吹きます。盆地の京都では東本願寺の境内でやらせていただきました。http://shakucamp.com

世界各地で続く尺八の進化 

 尺八の国際化が続きます。そもそも中国の楽器だった尺八が日本に伝わり、江戸時代に虚無僧の本曲と三曲合奏の分野が成立し、現在の古典尺八音楽となっています。それから20世紀に新日本音楽や現代邦楽も加わり少しインターナショナルな楽器になりました。

 音楽は文化の一環で、文化だからこそ生きていて、その時代時代、場所場所で人々に影響され、進化し続けます。現代の情報化社会の中でその進化が世界各地で続いているし、内外でも互いに影響し合っています。今は、尺八の音の普遍的な魅力が外国でも広く楽しまれていて、新しい作品、新しい演奏形式等がどんどんできています。私が今住んでいるボルダーでも「Shakuhachi」は「Sushi」や「Tsunami」と同じように一般に通じる外来語になっています。

 今、20年を記念するべきでしょうか?

最初の本当の国際尺八フェスティバルは1994年に故横山勝也師の国際尺八研修館が主催した「美星国際尺八音楽祭」で、そこからの四半世紀を記念したい気持ちが強いです。絶えることのない横山先生の熱意と努力がなければ20年前のボルダーそして今年のロンドン、ロッキー尺八キャンプは全てなかったに違いありません。

 横山先生は1998ボルダーの前夜祭で泣きました。涙の演説の中で「こんな流儀を超えたフェスティバルは海外でなければできなかった」と言いました。横山先生をはじめ、尺八の国際化に大きく寄与した巨匠たち、演奏家、指導者、それから諸外国で尺八の新しい場、新しい世界を作り続ける尺八愛好家に感謝するべきでしょう。

 今年の夏、コロラドやロンドンで会いましょう!


●ロッキーマウンテン尺八サマーキャンプ 参加費:$450(食事宿泊費別)初心者$250、奨学金あり、3月20日までの早割:$400

お問い合わせ:ShakuCamp@gmail.com